あまの

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宛てがわれた自室は一人で使うには充分すぎる広さだった。あちらの世界では1K6畳の少し手狭に感じるアパートの一室に住んでいるのだから、「主様はこちらのお部屋を使ってください」だなんてはじめて言われてから数日は、そわそわと落ち着かない日々が続いたものだ。
さすがにもうそわそわすることはなくなるほどにはこの部屋で過ごして来たけれど、やっぱり落ち着く空間は狭いところ。だからこの部屋での私の定位置は、部屋の入口から対角にあるベッドと壁の隙間だった。
土足文化のこちらでは、屋敷の中も土足のところが多い。しかし、このベッドと壁の隙間の一畳にも満たないこの空間だけは、ボスキにお願いして色の違うカーペットを敷いてもらった土禁エリアなのだ。私はそこで靴を脱いで小さくなって本を読んだり、空想したり、こちらの世界で手に入れた宝物を取り出して眺めたりして過ごすのが好きだった。

6/4/2023, 4:37:50 PM