『怖がり』
自分の怖がりな性格を、生存本能が強すぎるだけだと言い訳することにしている。
恐れ知らずは勇猛果敢に見えるけど、慎重さや思慮深さに欠けるのでは?と皮肉も言う。
だって、そうでもしないと不安に飲み込まれそうになるから。
深夜二時、寝室で「パチン」と乾いた音がした。
ただの家鳴りだ。木材が温度変化で反っただけ。頭ではわかっているのに、心臓はドキドキと胸を叩き始める。
私は布団を鼻先まで引き上げ、暗闇の中で目を凝らした。
もし泥棒なら?
もし幽霊なら?
想像力という名の怪物が、クローゼットの隙間を巨大な口に変えていく。
意を決して電気をつけた。そこには、床に落ちたクリップが一つ。
「……なんだ」
安堵して笑った瞬間、ふと気づく。
――職場ならともかく、うちにクリップなんてあったっけ?
途端に、背筋に氷を押し当てられたような感覚が走った。
本当の恐怖は、ほっと気を緩めた後にやってくる。
3/17/2026, 5:45:42 AM