作家志望の高校生

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凍える体に鞭打って、ぬくぬくとしたこたつから抜け出す。ストーブに暖められていた自室はまだよかったが、廊下に出ると冷たい空気が雪崩込んできて、思わず身震いした。一歩踏み出すと、裸足の足裏に、真冬の気温に晒されていたフローリングの温度が突き刺さる。
足が霜焼けしてしまう前にさっさと用事を済まそうと、家の中を小走りで移動した。悴みそうになる指先で脱衣場の扉を開ける。仕事を終えた洗濯機の蓋を開けて中身を取り出すと、凍りつきそうなほど冷たい、濡れた布の感触に顔を顰めた。それでも干してしまわないといけない、気を持ち直し、取手の外れかけた籠にぎゅむぎゅむと洗濯物を詰め込んでいく。腰と腕に力を込めて持ち上げると、ずっしりとした重みが伸し掛かってきて思わず呻き声が漏れてしまった。
できるだけ急いで暖かな部屋に戻って洗濯物を床に置くと、ようやく一息つく。こたつに入ると干す気力を失ってしまいそうだったので泣く泣く我慢し、加湿も兼ねて部屋の中に洗濯物を干してしまうことにした。
秋服として買った薄手の長袖の皺を伸ばし、ラックに掛けていく。今年も出番が少なかった秋服は、一昨年買った安物だとは思えないほど綺麗なままだった。黙々と作業を済ませ、洗濯籠は空になった。しかし、まだやることは残っている。
できるだけ厚めの秋服におろしたてのダウンを羽織って防寒を固めてから、覚悟を決め玄関を開け放つ。廊下がマシに思えるような、霜が降りたばかりの外は極寒で、吹き付ける北風にぎゅっと目を瞑った。
目的地はクリーニング店。預けてあった冬服を取りに来たのだ。
衣装ケースごと受け取って、車のトランクに載せて家路を辿る。帰ってから取り出せば、洗いたてのセーターや裏起毛の分厚い服がもふもふと積み重なっていく。
なんとなくやりたくなってしまって、床に並んだ服の山に飛び込んでみた。クリーニングに出したばかりの服は、成人済みの男が飛び乗っても全然埃っぽくならない。ふわりと立ち上った洗剤の匂いに眠たくなってきてしまったが、ここまできたのだ、衣替えは終わらせてしまうことにした。
ギチギチで閉まらない箪笥を無理矢理押し込み、衣替えを完了する。一仕事を終えた達成感を胸にこたつに潜り込んだ。クリーニング店からの帰り道、大量に買い込んでおいた大袋のお菓子を一つ開けてセットする。片手にスマホ、片手にお菓子を装備したらもう、動く気なんて起きるはずがない。
冬支度を終えた俺は、同じく冬支度を終え丸みを増した野良猫を窓越しに眺めながら、こたつという名の巣に籠もることにした。

テーマ:冬支度

11/7/2025, 7:40:42 AM