てふてふ蝶々

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予定日よりも2週間も早くに来た陣痛。
よりによって、夫は突然の出張。一泊するだけだからと、今朝早くに飛行機に乗ったばかり。
悪天候は天気予報でわかってた。
もう、産休に入っているし、家でのんびり過ごしていれば大丈夫なんて油断してた。
昼過ぎにはテレビで災害の情報、台風の進路予想。避難を呼びかける地域。
片道1時間の実家には来週に帰ればいいかって思ってた。
何もかもが油断してた。
出産予定の産院は実家の近く。
痛みの波が少しずつ感覚が狭まる。
心配のあまり、実家に電話した。
「今から迎えに行くと言う母。産院に電話しろという父。」
母には少し待ってもらって、産院に電話したら折り返し連絡すると言って電話を切る。
途端に今までのものとは何か違う下腹部の痛み。張り。
ぐっと波が治るのを待つ。
脂汗が吹き出す。
産院に電話をかけると救急車を呼ぶように言われた。
初めて119に電話する。
事情を伝えるとすぐに来てくれるとの事で一安心。
次の痛みの波が来る前にと入院セットを取りに行く。
一歩一歩が慎重になる。
手元の電話は119に繋がったまま。
今の私には命綱のようで母には申し訳ないと思いながらも切る事はできない。
入院セットの前に来た時に痛みと同時に部屋中がピカッと光る。直後、部屋中が暗闇になり命綱の通話も切れているようだ。
どうしよう。
絶対絶命なんて言葉が頭をよぎるけど、お腹の子のために絶命はできない。
携帯は圏外。しかも電池切れ。どちらが原因だろうか。
のんびりとネットサーフィンなんてするんじゃなかった。
痛い。痛すぎて苦しい。痛すぎて吐きそう。
たくさんの弱音が声にも出せず涙になる。
怖い。暗い。不安。
どうしたらいいかわからない。自分のバカさに呆れ情けなく、こんなお母さんでごめん。
声には出さず、そっと膨れたお腹に手を添える。
とにかく、動かずじっとその場に座り込んでいたが、それすら辛くて、床に直で横たわる。
硬いし、体が冷えそう。
グッとチカラを入れて格好悪いけど四つん這いのポーズ。とにかくお腹は冷やさないように。この子だけはと必死。いや、死にたくない。
そうこうしているうちに、雷鳴の間に聞こえる救急車のサイレンの音が聞こえてきた。
もう、大丈夫。
この子も私も助かる。
こんな最悪な状況を2人だけで乗り越えた。
まだ見ぬ我が子と強い絆が繋がれた。
この子が生まれて、どんな酷いことがあっても私達なら乗り越えられる。絶対に。
どんな嵐がこようとも。

7/29/2023, 2:19:58 PM