ガラスの向こうで忙しそうに行き交う人々を横目に私は目の前に並べられた、いや目の前に座る二人に唖然とした。
「あ、すいませーん。ザッハトルテ一つ」
二人の片割れが店の者に注文した。それに続きその片割れも注文をした。
「すいません。ケーキお代わりで追加でタルトも」
店員の軽やかな声が聞こえてくる。
ここは何処にでもある普通のスイーツ喫茶、そこで''ただ''の休憩をする為に赴いただけだ。
そう''ただ''の…普通の休憩
「イヤイヤイヤ、まだ食べるおつもりで!?」
「「うん」」
「すいません、少し眩暈が…」
ただの、普通の、休憩ではあるのだ。
ただ、目の前の注文の量がえげつないのだ。
「今までにどれ程注文したのか分かっていますか!?」
「「え?」」
「…え、な、なんですか」
お二人はきょとんとした顔を浮かべ私を見てきました。こうなるとこちらが間違っているかのように思えてきて少々焦ります。
「「まあまあ」」
「…」
内心叫び出したいくらいです。
二人はマイペースと言うのかなんと言うのか……
「このお皿と容器の量を見てください!もう机が埋まってしまいましたよ!!?」
ある程度はお店の方が下げてくれましたが、下げられたらそれでどんどん注文をしていきました。
「第一、この量を本当に食べられるのですか?」
「「食べれる」」
大体さっきから何故同時に喋るんだ、お二人は双子ではありません。証拠に姓も顔も違います。
ただ、甘いものに目がないのです…。
「ほとんどの皿は彼のだけどね」
「何言ってんのおまえもそれなりに頼んでる」
「私からしたらお二人共同じくらいですよ…」
向かいに座る相席の方々はその後もスイーツを食べていた。
この人達とは向かい合わせで座りたくない…いや、同じ席に座りたくない。
一番の理由はコレだ。
「すいませーん。青い春の一時を甘酸っぱい恋で仕立てたケーキと甘く赤く熟れた青春の果実のパイを追加で」
「すいません。きゃピきゃピるんるんケーキと魅惑のニャンニャンラテも追加で」
私は先に帰ると二人に言い席を立った。
今思えばお二人と私とでは年齢が多少離れているだからか、だからなのか?何故あんな恥ずかしげもなく涼しい顔してアレを注文出来るんだ!!?
↑この人二十前半
二人←十八
因みに三人は男である。
空は快晴
8/25/2023, 5:24:08 PM