がらんとした、どこか疎外感に包まれた夕暮れの部屋の真ん中で初めて知る。 ああ、いないんだ、と。 床に落ちていた写真立て。 乱雑に置かれた俺の部屋の合鍵。 夕陽に染まる銀の指輪。 それくらいしか元の部屋の状態と変わらない。 なのに、なのに、あいつが来る前と去った後では全然ちがう気がした。 ああ、いつの間にあいつが俺の中の当たり前の風景と化していたのだろう。 払っても纏わりついてくるじめついた空気が鬱陶しい。風景 #210
4/13/2025, 1:42:55 AM