紗夢(シャム)

Open App

【バレンタイン】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】

2/14 PM 5:50

「――悪いっ、遅くなった」
「あ、お疲れ様ー、天明(てんめい)くん。
 予想してたから大丈夫だよ~」

 教室に着いて開口一番謝ると、
 古結(こゆい)がにこやかにそう答えた。
 2人のいる席に近づくと、宵からも
 静かな声で「お疲れ様」と労われる。

「ね? 言った通り告白ラッシュだった
 でしょ?」
「あー…、結果的にそんな感じだったな。
 俺は完全に想定外だった」
「なんで想定出来なかったのか不思議。
 だって、天明くんなら中学生の時も
 バレンタインデーは告白されまくりじゃ
 なかったの?」
「いや、中学の時は親の仕事の都合で
 日本にいなかった。
 海外だと、バレンタインは男性から
 女性へ感謝を表す日って感じだったしな」
「えっ、天明くん帰国子女だったんだ!
 そっか~、なるほどね~。
 だからモテ度の自覚がなかったんだね」

 うんうんと納得したように頷く古結に、
 宵が話しかける。

「暁。そろそろ……」
「あっ、そうだね。はい、天明くん。
 これはわたしたちからのバレンタイン。
 大量のチョコを貰うだろうなって
 思ったから、あえてお煎餅にしてみたよー」
「それは、正直助かるな。
 チョコばかり食べ続けてると、
 甘くないもの欲しくなりそうで」
「一口サイズのハート型お煎餅がいっぱい
 入ってるから、チョコの合間に
 食べやすいと思うよ!
 こっちがオーソドックスな醤油味で、
 こっちが宵ちゃんが選んだカレー味」
「ああ、いいな、カレー味。
 ありがとう、宵。大事に食べるよ」
「……っ、どう、いたしまして……」
「古結も。ありがとな」
「ふふふふ、どういたしましてー」

 俺にとって、今日は本当に
 青天の霹靂レベルの1日だった。
 けれど今、2人のお陰でようやく
 ほっとすることが出来たと思う。

2/14/2023, 4:31:50 PM