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無色の世界

 2026年に、ついにサグラダ・ファミリアが完成するという。およそ150年の工期。すごいよね。

 映像ではとんがりの外観を見る機会が多いが、サグラダ・ファミリアの内部も必見だ。まるで妖精の世界に入り込んだようなきらめく空間。荘厳なステンドグラスが圧倒的な光彩を生み出している。

 ステンドグラスは大きくわけて2種類ある。ステンドグラス風と本格的なステンドグラス。

 ステンドグラス風は1枚のガラスに絵の具などで色を付ける。

 本格的なステンドグラスは、複数の色ガラスを鉛枠などで繋ぎ合わせる。当然、こちらのほうが手間暇かかるが、それだけの特別な輝きがあるのだろう。

 色ガラスとは、ガラスに金属を混ぜて作る。こう一言で言ってしまうと簡単に出来そうだが、実際には、わずかな条件の違いで色合いが変わってしまうものらしい。それこそ150年も前なら、全く同じものを作るのは今よりも容易ではなかっただろう。

 だが逆に、その微妙な色合いの違いが、透過する太陽の光に深みを与えているのかもしれない。

 僕はまだ行ったことはないのだが、生きている間に必ず行きたいと思っている。


 
 という話を年上の彼女にした。

 普通の透明なガラスじゃあダメだったの?

 え?それはちょっと。そもそも、教会や聖堂のステンドグラスは、聖書を説明するっていう役割があるんだ。イエス様をドラマティックに演出する、みたいな感じで。サグラダ・ファミリアはあまり宗教色は強くないみたいだけどね。

 無色透明のガラスだと神様の説得力がない?

 かもしれない。

 ふうん、神様も努力してるんだね。と彼女が言う。

 で?
 
 で?とは?

 なんでこんな話してるの?

 ええっと。一緒に旅行行きませんか。サグラダ・ファミリア。

 早く言いなさいよ。回りくどいよ。話が長い。

 ……僕なりに努力してみたんです。

 
 
 

 
 
 

 

 
 

4/18/2024, 10:04:10 PM