『夜明け前』
「本気じゃないなら、それは恋じゃない。ただの遊び。本気のやつだけを恋って言うんだろ」
夜明け前のコンビニ。
イートインスペースでそんなことを言ってる子がいた。
そう、子供。まだ小学生くらいの。
話を聞いている相手はいない。
ハンズフリーで通話中とか?
それにしても凄いな、少年。
年齢=恋人いない歴の私には、とても含蓄あるお言葉に聞こえますですよ。
「まあ、おまえのソレが本気かどうかはどうでもいいんだけど」
そう言って手を伸ばした先に、うっすらと黒いモヤのような物が見えた。
それがだんだん濃くなって、人の形を取り始める。
「夜が明けたら帰るんだぞ」
そう言って少年は消えてしまった。
人型になったモヤが、ゆっくりとこちらに振り返る。
それは、私がまだ自分の気持ちにさえ気づいていなかった幼い頃、川で溺れた……
9/14/2024, 7:13:56 AM