『巡り逢えたら』
また、巡り逢いたい人がたった1人だけ居る。
一度だけ出逢った名前だけを知っているあの人。
あの人は、姿も声もはっきりとは見えない朧げで、
この世の人では無い事だけは分かった。
あの人は、そんな存在だった。
ずっと、ただ私の後ろに居るのはなんとなく分かる。
人が後ろに立っているような感覚があるから。
私はそれを怖いとも嫌だとも思わなかったのは、
何となくその理由を分かっていたから。
たまに私に存在を教えてくれる時が何度かあった。
抹茶アイスが欲しいと指差したり、
エレベーターホールに居たり、
それも季節で服装が変わっていたり、
稀に、存在の意思表示してくれることが
私は、嬉しかった。
何故なら、
あの人は、何年も私の後ろにいてくれたから。
楽しい時も、悲しい時も、側に居てくれたから。
あの人は
決して家の中まで入ってこなかったし、
心の中まで入ってこようとはしなかった。
それに、
私はあの人が何者かなんて、何でも良かった。
ただ、ずっと
あの人は側に居るものだと思っていたから。
側に居て、
私の命が尽きた時、
やっと声を聞けるんじゃないかと思っていたから。
だけれど、
別れは突然やってきた。
あなたは、最後だからと意思表示して、
私の家族の身体を借りて、私に逢いに来た。
私は、なんとなく
『もう、二度と逢えない』のだと悟った。
だから、あなたの名前を訊いた。
もう一度、あなたに巡り逢えたら分かるようにと。
いつか、私の命が尽きた時
あなたの名前を呼べるようにと。
10/3/2024, 1:54:56 PM