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夢が醒める前に


職場の先輩の話では、男は靴にその人が現れるそうだ。

電車の中、斜め向かいの入り口前に、ギターケースを背負った青年が吊り革を持ち立っている。

彼のバンズの靴を眺めて、数年前の自分とつい重ね合わせる。

自分はベース担当で、圧倒的な才能を持つわけでもなく、作曲もボーカルも出来る仲間の力を借りないと食べていけないことは明白だった。
だから、大学卒業と同時にそのレールからは降りた。

今でも、ライブハウスに立つ夢を見る。

その夢の中ではいつも。
汗を流しながら、必死に弦を鳴らす自分がそこにいる。

夢の中でくらい「やり切った」と。
夢が醒める前に、そう思いたかった。


今は、電車の中で自分のコールハーンの革靴を見つめている。

3/20/2026, 8:21:34 PM