「沈むように、溶けていくように〜」
夕暮れも近い時間帯だが僕は自転車で爆走して帰路を辿っていた。
いつもなら部活があるため日が沈んだ頃に帰っているのだが、テスト前ということもあり部活は休みとなり早めの帰宅となる。
だがそれを差し引いても、少しキーの合わない流行りの曲を口ずさんでしまうほど、今日は機嫌が良かった。
特段予定がある訳でもないし、バイトの給料日でもない。なんなら携帯代も支払っているためお小遣いなど雀の涙程だ。なんてことはない平凡な一日だ。
だが、そんなモノクロな日常も好きな子と話せたという事実だけでバラ色に変わる。
僕はお世辞にもかっこいいわけでも無ければ明るい性格でもない。部活では先輩からも後輩からもイジられるキャラクターで、見事な程に三枚目だ。
そんな僕にも明るく接してくれているのが真菜ちゃん。みんなからも人気だが男勝りだからあまりそういう噂を聞かない。けど僕から見れば顔も可愛いし性格も優しくて少し抜けている所も僕から見れば愛しく見える。
告白したい、とは思わない。
というより鏡を見る度に自己否定する程に自分の顔が嫌いだ。目はタレ目で一重と重い印象だし鼻は少し幅がある。唇も太い気がするし耳は不揃いだ。こんな僕では告白したところで、いや告白が成功したところで恥ずかしくて君の隣を歩けないだろう。
思考が低空飛行を始め、気持ちを曇天が埋めつくそうと蝕んでいくと、身体もまた正直に重くなっていく。
時間帯もあってセンチメンタルになりやすいのだろうけど、先程のバラ色はどこへやら。あっという間に景色は色を失っていく。
そういう時は気分を変えないと。
僕はお気に入りの曲を口ずさむ。
「期待はずれと、言われた僕の、理想の未来はどこよ〜」
何年も前に流行ったマイナージャンルの更に有名とは言い難い曲。
でも、力強いネガティブな歌詞とガチャガチャとしてるとも言えるロックナンバー。
この曲こそ僕の本心を表してやまない大好きな曲だ。
でもこういうのが好きだから、君にも嫌われてる自信があるんだ。
『沈む夕日』
冒頭の曲『夜に駆ける』
最後の曲『僕はまだ本気出してないだけ』
4/7/2023, 9:23:50 PM