紫乙

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『彼女にプロポーズしました!』
意気揚々と誇らしげに、24才の若者が報告してくれた。
彼と私は初対面だったが、彼女の方から彼の様子は聞いていたので、彼と会った時は初対面さをあまり感じなかった。

これから結婚して、未来を創り上げていく若者達は美しいと思う。
しかし、私は内心、
『これは、辞めた方がいい』と。
申し訳ないが幸福であるはずの未来を感じられなかった。

以前から厳格な彼女の父親が、彼と会って欲しいと言ってもなかなか重い腰を上げてくれなかったとは聞いていた。
たぶん職業柄何かしらの関連があって、彼のことをよく聞いているからだろう。
何かを知っているのだなとは感じたが、ひと目見て、あ!これは父親の目は節穴ではないなと強く感じた。

結婚するなどと、浮かれた事を言うな。ママごと遊びじゃないんだぞ、と言いたくなる程、まだまだ未熟すぎて子供だった。

約1時間の面会だったが、そんな短時間の中でも、彼から出て来た言葉のいくつかに、子供すぎて話にならんな、と感じる部分がいくつかあった。

彼女をあなたには嫁にやれない!と強く感じたこと。
彼女のどんな所が結婚したいなと思わせてくれたの?と質問したらば、

『彼女は、別に美人なわけでもなければ、スタイルがいいわけでもない。彼女よりも綺麗な子は沢山いるが、彼女と一緒にいるとホッとするからです』

本人はさぞかし、好感度の高いセリフを並べて大人達を感動させられる!と思って来たが。何かの歌の歌詞を採用したか、有名人の婚約会見で使われた言葉を再利用か。
この言葉を言えば、心が美しく見た目より中身の良さを見られる素敵な人!と思わせられると感じて話したのだろう。
こんな馬鹿にしたような事を言う男に、うちの大事な娘はくれてやれん!

若すぎる故に出るボロが、悪気がないことは十分承知しつつも経験値の低さをアピールしているにしか見えてこない。こ
結婚ともなると、みんな若いうちにしたがることだし、適齢期にきている彼女からすれば、これ以上待つのなら、別の人を探したくもなるはず。
この子は将来、浮気もするし、彼女を嫌いになるだろう。
最期まで大切にしてくれない事を知りつつ渡す事は出来ない。

父親にはそれが見えていたからかもしれない。
親の意見と茄子の花は千に一つの無駄もない。
きっと彼には、何故この俺が拒絶され、結婚の許しを得られないのか?こんなにカッコいいのに!と思っている事でしょう。

6/17/2024, 6:53:11 PM