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空を、飛んでみたいと思った。
だから、空を翔べるアイツに頼んでみた。

アイツは嫌そうな顔をしながらも、渋々了解してくれた。


そして今夜。
二人、手を繋いで、夜の世界へ飛び込んだ。



「すげーオレ空飛んでる!!」
「俺の能力でな。感謝しろよ」
「もうめっちゃしてる!あ、あそこキレー」
「ホントだな」

駄弁りながら、風を切って進む。
耳元は風の音で塞がれているから、いつも通り喋るにも、声を張り上げる必要がある。
そうやって大声を出すのも、飛ぶことの爽快感を大きくしていた。


「誰か連れて飛んだのは初めてだったが、意外とうまくいくもんだな」
「ま、オレだからな!体の使い方分かってっし」
「初めてなのに?」
「へへん、だからこーやって、自由じざ………っっっ!!!!」

調子にのって、体を動かそうとしたとき。
一瞬、手が離れた。
つかみ直そうとして二人同時に手を伸ばすが、その手は同時に空を切った。


力の伝達回路が切れて、重たくなった体が落ちていく。
息がうまく吸えない。服が風に遊ばれてバサバサうるさい。

そうして意識が薄れ始めた時。
急降下してきたアイツに抱き止められる。
オレも必死でしがみついた。


空中で静止し、二人抱き合う。
お互いの荒い呼吸だけが聞こえていた。


「バッ……カ野郎…だからやりたくなかったんだよこんなこと」
「…ごめん」

「…怖いか?」
「ちょっと」
「もうやめるか?」
「…いや、まだ飛びたい。それに、お前はまた助けてくれるだろ?」
「はあ、仕方ねえな」
「ハハッ、冷てー」
「……じゃあ、行くか」
「おう」

そっと体を離して、手を繋ぎなおす。
今度はもう離れないように。
そして、また駄弁りながら、風にのって飛び始めた。


遠く、遠くの空へ。



【夜空を駆ける】

2/21/2025, 11:05:03 AM