◎さらさら
#73
両手からこぼれ落ちていく。
砂みたいだ。
ずっと手元に置いておきたい、
手離したくない。
そんなものが沢山増える。
まるで砂時計だ。
ある人は言った。
「そこをどいてください」
またある人は言った。
「ここは任せて、先に行って」
別のある人は言った。
「また会おう」
いつかの人は言った。
「忘れないで」
皆、皆、みんな、みんな……
零れていった。
全部欲しがって、全部失った。
ニンゲンはその儚い時間を生き急ぐのが
好きらしい。
置いていかれる側のことなんて、
気にしちゃくれない。
わからないよ。
君たちは馬鹿だ。
そうやっていつも居なくなる。
僕を独りにする。
僕はもう疲れたんだ。
だから、勇者。
君を倒して終わりにするよ。
誰も居なくならない、誰も生まれない。
そんな世界なら、
この希望を捨てられるでしょう?
5/28/2025, 10:44:53 AM