母の洋服箪笥から父の手帳が出てきた。
所どころ塗りが剥げて黄ばんだ地の浮き出た革張りの手帳。
年季は入っているがカビの形跡は無い、時々母が拭いてやっていたのだろう。
晩年、父との関係は良好とも険悪とも言えない、よくある父と息子という微妙なもので。
同じ家に住んでいるにも拘らず会話といえば挨拶や「風呂沸いたって」等の実に簡素なものだった。
何を考えているのかサッパリ分からない、父も自分のことをそう思っていたに違いない。
パラパラと手帳を捲っていく。
黄ばんだ紙面に書かれた文字、達筆過ぎて何が書いてあるのかは分からなかった。
テーマ「美しい」
1/17/2024, 8:35:42 AM