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『たくさんの想い出』

BLです。お気をつけください。

きっとそれは、運命だったのだろう。

冬の日の最中、人混みのその向こうに驚きと嬉しさをごちゃまぜにしたような顔をして立っていたあなたを思い出す。
前世では伝えられなかった思いとか、感謝とか、そんなものが飛び出そうになって、それでも声帯が凍りついた俺をあなたが抱きしめたその時から、今世の幸せが決まった。

時が流れて昔より近い隣にいるあなたが馴染み始めた頃、なぁん月島ぁ、と甘えた声であなたが俺の名を呼んだ。
「前世ではできなかったことを今世ではいっぱいしよう。そして、たくさんの想い出をつくろう」
「いいですね。手始めに何しますか」
「……キスしたい」
ぐ、と喉の奥が詰まった気がした。
え、やばい。なんだそれ。破壊力。
「…だめか?」
見えない尻尾と耳をしゅんと垂れさせながら、あなたが呟く。
そんなのだめなんて言えないだろ。
「だめじゃ、ないですけど」
「いいのか!?」
さっきのは何だったんだというレベルに喜色を全面に散りばめた顔であなたが笑う。
「…はい」
言うが早いか、あなたの唇が俺のそれに重なった。
柔らかい、ささくれなんて知らないようなそれを感じてケアをしておればよかったなんて考える。
時間的には一秒にも満たないようなその時間が、俺には永遠に感じられた。
「嬉しい。ずっとしたかった」
少し恥ずかしいけれど、今言わなければ後悔すると思って俺もです、と囁く。
あなたの驚いた顔がやけに愛おしくて、その唇に再び自分の物を重ねた。

ゴールデンカムイより鯉月です。
これは前世ではお互いに誰より大切で恋愛感情は持っていたけれど最後まで恋愛なしで隣にいた鯉月(のつもり)です。
そう思って見てください。
お願いします。

11/18/2024, 10:03:40 AM