「ネコの後ろ姿ってなんかさみしースよね」
「ネコ、の、後ろ姿?」
怪訝に聞き返されて「あれ?通じなかった?」と思い至り、この人情緒たりねぇからな、と納得する。
「ほら、ネコってあれ、撫で肩じゃん」
言いながら数メートル先のアスファルトに座る野良猫を指差す。尖った耳。まるいあたま。すとんと落ちてどこかさみしい肩。丸い腰。
ぱたり、と長い尾が物言いたげに地面を叩く。
「ね?」
「……面白い話のひとつとして聞いておくよ」
隣で少し首をかたむけたこの人の肩は、糊のきいたスーツに覆われどんなかたちか見えなかった。
そとからはみえない なかのかたち。
2023/11/04『哀愁をそそる』
11/4/2023, 12:06:22 PM