霜月 朔(創作)

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終わらない物語




貴方は、私の隣で、
静かに眠っています。

身動ぐことも、
鼓動を刻むことも、
呼吸をすることさえ、
ありません。

そっと、貴方の頬に触れます。
貴方の身体からは、
少しずつ、その温もりが、
失われていくのが分かります。

「もう、大丈夫」
そう語りかけながら、
愛しい貴方の口唇に、
小さなキスを落とします。

悪意渦巻くこの世界で、
苦しみ続けた貴方。
そんな貴方に、
私は、永遠の安らぎを、
与えてあげたのです。

私は、
最期の朱に染まる貴方を、
そっと抱き締めます。
「今から私も
貴方のもとへ逝きますから」
と、囁き微笑みかけます。

私は、
貴方に安らぎを与えた、
冷たくも美しい、
銀の刃を手に取ります。

何も怖くはありません。
私達が記していくのは、
終わらない物語、
なのですから。

1/26/2025, 5:49:36 AM