NN

Open App

『病室』

病院の屋上。私には無縁だと思っていた。緑がいっぱいの屋上で私は酸素を身体中に行き巡らせた。それを繰り返す度にふわふわと視界が揺れていた。視界が揺れる中考えるのは、私の姉の事だった。

子供の頃は姉も私と同じくらい元気だった。でも、そんな姉はもういない。姉は、病室という棺桶で死んでいくらしい。無機質な部屋で終わっていく姉を私は見ることが出来るのだろうか。

今日は空がきれいだな。なんか無駄なことを考えてしまう。そんな視界の端にセーラー服が写った。自然と目がいった彼女は裸足だった。ふわふわと飛んでいる鳥のような彼女は、舞を舞っているようにも見えた。彼女の瞳は曇りながらも澄んでいるようにみえた。

「おねーさん。なんかありました?」
[えっ、あっ。すいません。]
「全然いいんですけど、、涙は拭った方がいいかと。」
そう言って目の前の女神はハンカチを手渡した。へレニウムの花が刺繍してあった。
[すいません。洗濯して返しますね。]
「あ、ありがとうございます。」

貴方に見惚れていました。なんて言える訳もなく、私は屋上から出ていこうとした。
【また見に来てくださいね。】という声が風のように耳を掠めた気がした。

8/3/2024, 7:22:25 AM