シシー

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「私の孫に手を出したら許さないからね」

 何を言ってるんだろうこいつは、と。
言葉だけは威勢がいいのに、階下の安全圏から動きもしない。助けを呼ぶでもなくキャンキャンと喚くだけ。
抵抗するのも馬鹿らしくなって口を閉じて力を抜いた。相手もあまりのくだらなさにしらけたようだ。同情的な目で一瞥してから祖母を名乗るやつに暴言を吐いて去ってしまった。

 昔からこうだ。
 何ひとつ自分ではできない。
 喧嘩も、遊びも、何も。

 あの後?祖母を名乗るやつは相手が去ったのを確認してすぐに帰っていったよ。次の日、一対一で顔を合わせたときに大丈夫かと聞いて、私がいるからねと抱きしめてきた。わかるかな、このズレが。吐き気のする一人芝居が。

 今日も今日とて引きこもり日々を浪費する。
何もしない自分を嫌うことも変わるための努力もしない。周りに責任を求めようとして、どうしても自分の無力さに帰結する。
 虹の橋を渡った相棒たち、人ではないのだけど、を追いかけたくてその方法を探している。最後まで遮らず否定もせず同調も哀れみも八つ当たりもなく言葉を聞いてくれたのは相棒たちだけだ。それを失って悲しむ間もなく次はどれにするかなんて、心がないのか。いや心がないからこそ人間なのか。自分も、そうなんだろうか。

 ほらね、もう何が言いたいのか分からない。
 言葉をもつ人から言葉を取り上げるとこうなる。
 思考すらままならなくなる。

 何か、ひとつでも、できることをちょうだい



                 【題:七色】

3/27/2025, 12:38:22 AM