学生の頃
アシストがなくて
ペダルを踏んだら
軋んだ金属音に不快感を覚えるような
古びた自転車を先輩から譲り受けた
車の免許を取ったけれど
ペーパードライバーだった私が
はじめて一人暮らしのアパートに招き入れた未来の愛車だった
大学に通う道すがら、舗装されてから年数が経っているであろう道を小さくダイブしながらペダルを踏む
ほとんど車道しかない蝉時雨の田舎道を
頼りない錆び付いた車輪で走り抜けた
学生の間で
滑走路と言われている拓けた一本道がある
大学とは真逆の方向だが
入道雲が日本アルプスの連なりを背景に立ち上ぼり
まるで異世界へ導く光の道のような風体で眼前に伸びてあった
絵画にでも出来そうな景色に一瞬目が眩みそうになる
この空を
道を
風を
臭いを
先輩は知っていたのだろうか
私のように果敢に挑んだのだろうか
この自転車で
私は水筒から冷えた麦茶を口に含み
ふと、大学校舎を振り返った
#自転車に乗って
8/15/2024, 9:19:45 AM