世界の片隅で、その命は静かに、けれども確かな足取りで終わりへの道を歩み始めていた。
―良い人生、いや虫生だったろうか。
運良く大きな生物に目を付けられることも無く、穏やかにこの生を終えようとしている。
ああ、急に辺りが暗く…。人間の影だろうか。
最後に跡形もなく潰されて終わる。私も仲間たちと何ら変わらない最期を迎えるのだな。
しかしその人間はいつまでたっても手を振り下ろさない。
じっと地面に張り付いて動かない私を見つめている。
食い入るように、決して見逃さないように。
そして花を私に寄り添わせた。
最期の時。
この虫生で唯一伸び伸びと恐れることなく、過ごせた時間だ。
12/29/2025, 1:19:25 PM