月が凪ぐ夜

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もう君の顔さえ思い出せない。
あんなに愛した君の顔が逆光に遮られる。

遠い遥かな記憶の中で、それでも僕は君を愛す。

理由も、切欠も、なにもかもが失せているのに、
君を愛した事実と、今も君を想う気持ちだけは、
今もなお消えずに僕の中に残っている。

それは未練なのか、執着なのか…。
始まりも思い出せない。終わりも分からない。

ただひとつわかっているのは、
おそらく僕は死ぬまで君を忘れない。

現実よりも夢に逃げるように、
たったひとつの珠玉の記憶を抱き、
誰も知らないうろの中に閉じこもる。

僕の名を呼ぶ優しい声に耳を塞いで。


【逆光】

1/24/2024, 1:51:24 PM