シリーズもの 2/10

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「あ〜、雨じゃん。ユウウツになるね」
おー、と返事をする彼女を横目に、
俺は心の中でガッツポーズをした。
(これ...あいあい傘のチャンスじゃん!)
だが人呼んで、話せば残念、歩く姿は奇行種の俺だ。
(絶対普通に誘ったら断られる...!!)
それだけは勘弁。俺はイケメン。片思い歴3年の男。
いける。いけるはず...。
「あ、なあ」
「何?どうかしたん?」
「あ〜、えっと。傘忘れたから入れてくれ」
「お前朝ビニール傘差してきてたじゃん」
「あ」
忘れてた。完全に忘れてた。
いや、まだいける。
「教室に忘れてきてさ」
「お前の腕見てみろよ」
「あ」
あった。今朝買ったビニール傘が。
いやいやいや。さすがにおかしい。誰かの陰謀だ。
いや、いやぁ...まだ、いける?
「さっきからお前おかしいぞ。どうしたんだよ。」
彼女が聞いてきた。これが正真正銘最後のチャンス。
「あいあい傘してぇな〜的な?」
「は?」
言われちまった。お前何言ってんだの感嘆符。
昔からこれが怖くて自分の本音言えんかった。
「ほら」
「え?」
「早くしろって言ってんの。雨止んじゃうから」
「あっと...よろしくお願いします...?」
「ハハッなんだよそれ」
もう雨は止み始めている。
「走ろ!」

5/31/2023, 11:47:57 AM