霜月 朔(創作)

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心のざわめき



夜の帳が降りるたびに、
言葉にならないざわめきが、
影のようにひたひたと、
忍び寄ってきます。

夜の空気が頬を撫で、
冷えた指先から、
命が零れ落ちます。
貴方が、何を求め、
何を望んでいたのか。
今となっては、
もう、分かりません。

――ただ酷く、
疲れてしまったのだ。

抑えきれずに溢れ落ちた、
貴方の独白が、
私の心をざわめかせます。

目を閉じれば、
闇が訪れる筈なのに、
耳の奥では、
尚も、ざわめきが響いて、
止まないのです。

僅かにこの手に残る、
貴方の温もりの記憶が、
最後の迷いを呼び覚まします。
それでも、
夜は深く、冷たく、
ただ穏やかな終わりへと、
私を誘うのです。

——独りきりで、逝くよ。

そう告げた貴方を、
私は許せなかったのです。
私以外の何者にも、
貴方を奪わせはしない。
たとえ、それが、
貴方自身であっても。

だから、
貴方の命は、私が、
この手で終わらせたのです。
…もう、二度と、
誰も触れられないように。

そして。
貴方の赤で染まる刃を、
この胸に向けます。
窓から差し込む月明かりに、
ぬるりと光る銀色が、
酷く美しく思えるのです。

私も、貴方の元へ逝きます。
心のざわめきが、消える前に。

3/16/2025, 8:46:37 AM