鶴づれ

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紅茶の香り


 ティーポットに紅茶のティーバッグを二つ。沸かしたばかりのお湯を注いで、香りを閉じ込めるように蓋をする。
 お盆にカップを二つ用意して、ティーポットも一緒に乗せる。砂糖は使わないから、スプーンは乗せない。
 よし、準備万端。
「紅茶、できたよ」
「おう、ありがとう。ケーキも皿に乗せといた」
 ソファに座る彼が笑う。
「ありがとう。このケーキ、本当に美味しそう」
 テーブルに二つ並んでいるのは、栗をふんだんに使ったモンブラン。私が栗好きなのを覚えていてくれて、彼が買ってきてくれたのだ。
 私も、彼が好きだと言っていた紅茶をカップに注ぐ。
「いい香りだな」
「そうでしょ」
 二人分のカップから、紅茶の香りがふんわりとたった。

10/28/2023, 10:53:06 AM