名無しの夜

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たんぽぽの綿毛が
ふわりと風に乗って飛んでゆく

どこまでも遠くへ飛んでいく様を
見届けたかったのに

そうやって見ている時に限って
風は柔らかく

ほんの近くに着地していた


遠く、どこまでも
なんて

見る側は勝手に思ってしまうけれど

たんぽぽにとっては
近くとも
おそらく必ず咲けるであろう、

この公園の片隅で良かったと
胸を撫で下ろしているかもしれない


風に乗って
どこまでも遠くに行きたかったのは




どこにも着地せず
遥か青の虚空に溶けてしまえたらいいのに


魂だけになったら
叶うだろうか


ああ、でも
会いたい子たちがいるのだった


どこまでも

ままならないね

4/30/2024, 12:57:09 AM