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クラスの中心でもなければ、盛り上げる男子でもない。

私はしつこい人が嫌いだ。声が大きい人も嫌い。

私の隣の席になった男子は、しつこいと思うくらい話しかけてくる。

しかも、声が大きい。

無視しようとしても、無視しきれない。

授業中だって、隣で話しかけてくる。

英語の授業の時間、電子黒板に映される英単語と聞こえる発音。

隣の人と話してみようとなり、その隣の席の男子とペアを組む。

「始めますよー。」とタイマーをセットされ、開始ボタンが押される。

私は、電子黒板に英単語とその意味を映されているとき、板書するのに必死で、なかなか電子黒板に目を向けられなかった。

英単語の発音や意味を聞きそびれたり目を向けられなくて、「なんて読むんだっけ....。少しでも電子黒板見とけばよかった。」と思った。

そのとき、ペアの隣の席の男子が、「この読み方は―」「この意味は―」と私の目を見ながら教えてくれた。

タイマーがなり、ペアと話す時間が終わる。

「ありがとう。」といえば、「うん。」と ニコッ っと笑いながら返してくれた。

「いい奴だな。」と思ってしまった自分。「いや、でも、声大きいし、しつこいし、....。」とコロッと隣の席の男子に落ちそうになった自分の考えを掻き消すようにした。

お母さんにこのことを話してみた。

そしたら、「へぇー、そうなんだ。」とニヤニヤしながら見てきた。

私は「いやいや、そんなんじゃないから。笑」と手を横に振る。

その日はそれで終えた。

翌日になっても、隣の席の男子の気遣いが頭から離れなかった。




一.二ヶ月が経ち、席替えをすることになった。

先生が電子黒板に席替え後の場所を映す。

電子黒板を見て、自分の名前を探してみると、廊下側から2列目、一番後ろの席で、「落ち着いて勉強できるとこだな。」と思っていたが、隣の席を見てみると、また同じ男子だった。

「あ、えぇ、...。」ショックになり掛けながら、まだ頭に残っている記憶がよぎる。

そして、席の移動が始まり、席を定位置に移動させた。

移動させ終わり、隣の席が目につく。

隣の席を見れば、私より背の高い君。机も私より高い位置。




授業中に話すときとなれば、隣の席の男子は、自分の前の席の男友達と話してる。

私はというと、人見知りで自分から話すことも苦労するほど。

一人でいると、隣の席の男子が話に入れてくる。

そんな事しなくてもいいのに...。

でも、自分から話しかけに行くより話しかけられた方が、私としては有難いし、楽だ。

話に入っても、私は聞く方に回るけど。




私は週に何回かしか学校に行けない。

『行けない』というのは、感情が浮き沈み、体調管理があまり得意じゃなく、睡眠時間も削っているくらい。

学校に行けば、隣の席の男子が笑わせようとしてくるのか、よく分からないけど、常に話しかけてくる。

そのときに、笑いあっているとこを先生に見られていたみたいだ。

「笑ってたし、楽しいんだろうなって思って。」と先生は言う。

いや、あれ、愛想笑いに近いもんなんだけど。

待って、愛想笑いだっけ?ほんとに笑ってたっけ。

私は学校でそんなに笑わない。友達といる以外は。

学校は愛想笑いで乗り切ってる。そのせいで疲れるけど。

隣の席の男子と話してるとき、ほんとに笑ってたっけ。

無表情で居ようと必死なんだけど、それが少し乱されて、崩された、?

....いや、そんなことないでしょ。




また、英語の時間に、ペアと喋る時間が作られた。

その日の私は、周りの目を気にしすぎていた。

隣の席の男子が話しかけてきて、私は焦りながら、慌てながら話していた。

「話しかけてもらってばっかでいいのだろうか。」そう思った。

そう思っていたら、セットされていたタイマーが鳴った。

会話を無理矢理やめて、お互いに席に座ろうとしていた。

そしたら、先生が近づいてきて、私と隣の席の男子の会話を続けさせようとしていた。

会話を続けることにし、私は周りの目をびくびく気にしながら話した。

ぎこちなく話している私に気がついたのか、先生は私のサポートに入った。

あぁ、サポートに入られても、プレッシャーで押しつぶされそうというのに。

隣の席の男子は、身振り手振りも入れて、私に伝えようとしてくれた。

あぁ、ごめん。もっと勉強しないとダメだこれ、

私は申し訳ない、迷惑だろうなと思いながら、会話を続け、先生が私たちの会話を終わらせようとし、「じゃあ、see you って、言いましょうか。」と言った。

私と隣の席の男子は了承し、席に座り、教卓の近くで話している先生の方に目を向けた。

そして、体も先生の方に向けようとしていた私に、隣の席の男子は

「大丈夫、迷惑かけたとか思わないで。自分がしようとしたことしただけだから。」

と声を掛けた。

私はその言葉で、「ほんとにごめん」というまだ申し訳ないという気持ちを持ったが、それよりも落ち着いて、安心できたという気持ちを持つ方が大きいかった。




君のことは、しつこくて、声が大きくて、そうやって気遣うけれど、裏があるんだろうなと疑っていた。

でもそうじゃなくて、「自分がしようとしたことをしただけだから。」という裏がないような言葉で、気遣いをしたくてした、誰かと話したくて、誰かを笑顔にしたくて、話しかけた、そういう気遣いが本心で君なんだと分かった。


好きなの?と言われても、その気遣いがあっても、それはある一面なだけであって、好きになれない。

他の一面一面は嫌いと言ってもいいぐらいなのだろうけど、嫌いなの?と言われても、「普通」で曖昧な答えしか思い浮かばなくて、嫌いにもなれない。











どうしたら君を「好き」に「嫌い」に区切れるかな?―

好きになれない、嫌いになれない

4/30/2025, 10:35:53 AM