夜空より黒い海原に二人グラグラと
軍服のお兄さんといいお着物のお兄さん
二人は深く信頼し合っていて、小さい頃から一緒であった。二人して軍艦に乗り込んで、他の仲間達と敵国へと進んでいった。
その黒い髪がサラサラと、着物のバタつきより幾分もおとなしく、海藻のように穏やかに揺らめいた。
それが流行り病でみんな死んで、お兄さんたち2人だけになった。
嵐が来ちゃっても、二人じゃどうにもならない。しかも、お着物がびしょ濡れのお兄さんは箱入りの息子であるときた。
軍服のお兄さんが頑張るのを、びしょ濡れお着物のお兄さんは、柱に必死につかまって、寒さに震えてそれをみていた。
ただ、柱は鉄で、目の前の障害物にドスンとぶつかって、大きく傾いて、ズルリと滑った。傾いた船は、2人連れて一度深く沈んだ。真っ黒で、2人はお互いを咄嗟に探そうとしただろう。幸いなことにすぐに船は起き上がった。
こりゃ、一人じゃたまらないと思った軍服お兄さんら、着物のお兄さんの腕を今までになく強く引いて、舵を握らせて、雨音に負けないように叫んだ。
「いいかい、耕造!お前が、今からこの舵を切るんだよ。俺はお前が生きて帰れるように、中を見てきてやるからね」
また強く揺れて、耕造の手が舵から離れようとすると、軍服のお兄さんは自分は吹き飛ばされもせず、耕造の手首と舵を、縫いつけるように押さえた。
その瞳はギラギラとして、耕造を見つめていた。さっきまでぼうっと光っていた唯一の夜のたより、ランタンのようであった。
5/5/2026, 1:49:16 PM