雰囲気のいい居酒屋のカウンター。
小百合は、恋多き女、ルミ子と飲んでいた。
ほんわかした雰囲気と謎の色気を振りまくルミ子。
「いいなぁ‥ルミ子は、恋愛テクニックみたいなものがあるの?」
「ないよーそんなもの」
ルミ子がケラケラ笑う。
そろそろ、お開きにしようとしたときー
突然、スーツを着た男が、ルミ子の腕をつかんだ。
「ちょっと、話あるんだけど」
男はイライラしていた。
ルミ子はキョトンとしていたが、思い出したのか、小さくため息をついた。
「電話も出ないし、ブロックしてるでしょ」
男は、一方的に『なんで』と『なぜ』を繰り返す。だんだんとルミ子から表情が消えていく。
(こんなときでも口角は、上がってるんだな)
喧嘩を止めるタイミングを完全に見失ってしまった小百合は、とりあえずビールを流しこむ。
「好きだったわけじゃないよ。ただ、寂しかっただけ。ごめんね」
男の顔がみるみる歪み、目に涙がたまる。カウンターに置いてあったお冷をつかんだ。
バシャン!
ルミ子の前髪からポタポタと水滴が落ちる。
カラになったグラスをバンっと強く置いて、男は無言で去っていった。
暗い公園。
店に居られなくなった小百合とルミ子は、近くの公園のベンチに座っていた。
「ごめんね」
「恋愛もいいことばかりじゃないんだね。びっくりした」
「ふふ‥そうだね。小百合ちゃんに迷惑かけちゃった。ごめんね」
順風満帆にみえる、ルミ子の意外な一面を見た気がした。
小百合は、ルミ子を慰めながら思った。
私には当分、彼氏はできないだろう‥一人でもちっとも寂しくないからなぁ。
3/24/2026, 4:39:48 PM