Werewolf

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【恋物語】

 まるでケルビーノだった頃が懐かしい。こまっしゃくれた制服の、まだ成人にも満たないくせに万能感に浮かされて、脈があろうとなかろうととにかくアタックし続けた。
 クラスの深窓の令嬢と付き合いたい一心で、ピアノ教室の体験入学へ。分かったのは案外才能があったということ、彼女が割と笑う方だということ。なんだか興が削がれてしまって、ピアノの方に打ち込んだ。
 クラスの合唱コンクールでピアノの伴奏に抜擢されて、深窓の令嬢はソプラノパートへ。声も綺麗だと思ったら隣の図書委員だった。そばかすも案外いいもんだなんて図書室に出入りをしてたけど、彼女と来たら読む本読む本経済学で、ちょっと読んだけど着いてけなかった。
 合唱コンクールの練習に、付き合いの良い何人か。中のひとりと仲良くなって、好きあってみたけれど、彼女がこっちの何がすきだか分かんなくて別れてしまった。
 まぁこんな調子で次々想い人を変えて、来る日も来る日も恋をした。でも恋人になってみて、少しするとなんだか飽きる。乞い求める気持ちが薄れていって、なんだか底が知れたなぁと思ってしまうと、自分で恋を畳んでしまった。
 ただ大学に入って気付いたんだ。どうやら僕は、ミステリアスというものに恋をしているようなのだと。

5/19/2023, 4:52:56 AM