駅を出たら白い闇にみるみる視界を奪われた。
滅多に見ないほどの濃霧。
自分の手さえ霞んで見える。
足元もおぼつかない。
霧の中を泳ぐように歩く。
ここは家の近く、いつもの一本道。
濃霧が出ても、迷うはずがなかった。
さあっと霧が晴れた時。
太陽が眩しくて思わず目を閉じて。
ゆっくり目を開けて、声を失った。
ここはどこだ。
道すらない、荒れた野原に立っていた。
周囲の住宅もない。
自分の家も。
振り返ると駅がない。見えないのではなく、ない。
ただただ、荒野が広がっていた。
自分は過去に来てしまったようだ。
穿いていたズボンが、昔風のもんぺに変わっていた。
ばあちゃんに会いたいな。まだお若いのかな。
最期まで聞けなかったレシピ、聞けるかな。
地形と記憶を頼りに、冒険が始まった。
【光と霧の狭間で】
10/18/2025, 12:07:22 PM