ストック

Open App

電車に揺られながら何となく窓の外を見ていると、眠らない繁華街の明かりが夜を眩しく照らしている。
あの光のなかで、たくさんの人、たくさんの想いが蠢いているのだろう。
賑やかなところが苦手な私は、思わずため息をついてしまう。

電車は大きな街から離れていく。ベッドタウンの明かりは地上に落ちた星のように夜に静かに浮かんでいる。
あの光のなかで、いろいろな家庭が団欒の時間を過ごしているのだろうか。
独り暮らしの私は、少し羨ましく思う。

電車はベッドタウンから離れていく。郊外の町の明かりはほとんど落ちて、代わりに星が夜を優しく照らしている。
町はもう眠りについたようだ。町も夢をみるのだろうか。
寝付きの悪い私は、いい夢をみてるといいなと思う。

電車は目的の駅に着き、私は下車して歩きだす。
郊外から更に離れた町は、灯りがすっかり落ちている。
私の家に灯りが着いても、あの電車からは見えないだろうな。ふとそんな考えがよぎる。
少し寂しい気もするが、大勢の目に留まらなくても私がこの光で満たされていればいい。
強がりな私は、そうやって寂しさを押し殺す。

7/8/2023, 12:00:58 PM