名無夏

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「いいよ。何処にでも連れていく」
なんて、貴方は言ってくれたね。
嬉しかったんだ。無口な貴方が私に対してそんなことを言ってくれるなんて思わなかったから。

そして私たちはふたりだけの逃避行を始めた。
行ったことのない遥か遠い街に出かけたり、私たちが元々住んでいた場所にはないようなカラフルなスイーツを食べたり。貴方は、「食欲が削られる」なんて言ってあまり食べなかったよね。
たったの数日間だったけど、幸せがいっぱいだった。
ルールに囚われなくて、陰口もなくて、自由にありのままの私でいることができて、何より隣に貴方が居てくれたから。

そんな幸せは突然終わりを告げた。当たり前のことだ。
高校生なんてまだまだ子供。まだまだ囚われる存在。
私たちの幸せな逃避行は、警察によって幕を閉じた。

「…ねぇ、諦めるの」
「もう無理だよ。十分だ」
「嫌だ。言ってくれたじゃん、何処にでも連れてくって」
「行けるわけがない。本当に信じていたの?」
「信じてたよ。あんたなら私を連れ出してくれるって。でももう終わりなんだね」
「…そうだな」
「本当、バカみたい」

貴方も、私も。

3/23/2024, 6:15:32 AM