あまの

Open App

夜は長い。
デビルズパレスの誰一人として起きてなどいない。草木ですらも眠る深夜。
その中で物音一つ立てず、このデビルズパレスの見回りをする。ひいては私にとって大切な人の安らかな眠りのために。

夜の見回りは孤独だ。冷たい夜の暗闇は私の影をも飲み込んでしまう。



もうすぐ夜明けだ。今日は平和に見回りを終えられそうだと思っていた矢先、視線の端に蠢く影を捉えた。その瞬間音もなく近づき、相手にこちらの動きなど全く悟られることなく捕らえる。

身柄を引き渡して全て終えた頃には、太陽が昇って辺りも陽の光に晒されていた。今日も一日が滞りなく終わったと屋敷の玄関に足を向ければ、朝も早いというのにそこには主の姿があった。

「おはよう。今朝もお疲れ様」
そう言いながら微笑む主の姿は朝日を受けて眩い。いや、朝日などでは無い。この心を溶かすような微笑みこそが私の夜の終わりなのだ。いつも完璧でありたいのに、この方の笑顔を見ると今日もこの笑顔を守り通せたのだと気が抜けた顔を隠せないのだった。

6/9/2023, 2:55:04 PM