「掴まれた手首から、熱」
私と彼は、物心つく前から一日中ずっと一緒にいた。
毎日毎日、ずっとずっと。
だから、ちょっとした「いつもと違うこと」にはすぐに気がつくのだ。お互いに。
「ねぇ、なんか顔赤いよ」
ふたりきりの通学路。
彼の顔色がいつもと違うことに気がついた。
「そうか?」
「熱あるんじゃない?」
「そうかなぁ」
彼は私と目を合わせようとしない。
これは、発熱しているという自覚、あるでしょ!
「今日、休んだら?」
「だから、熱なんかないって」
いや、その反応はあるけど隠してるやつ!
「ほんと、そういうんじゃねーから」
ぱしり。
額に手を伸ばした私の手首を彼は掴んだ。
その表情に息を呑む。
「そういうんじゃ……ないから」
もう一度繰り返される、発熱を否定するセリフ。
今熱いのは、私の方だ。
────微熱
11/27/2024, 8:36:15 AM