風が運ぶもの
痛みという厄介なものが毎年、風に運ばれてくる。
30年ほど群発頭痛という痛みに見舞われてきた。
右目の奥が、抉られるような鋭い痛みだ。
1年の内の2か月ほどだが、毎日1時間ほど強烈な痛みが襲ってくる。
その1時間が過ぎるとなんでもなかったかのように痛みが消えてゆく。
1年間で1か月か2か月くらいの期間にまとまって集中砲火を浴びせるように襲ってくるので群発頭痛と呼ばれている。
世界三大激痛の1つで、自殺頭痛とも呼ばれている。
通常の頭痛とは比べ物にならない強烈な痛みだ。
高濃度の酸素吸入で少し楽になるということだが、私は経済的な余裕がないので耐えるしかない。
痛みが始まると鎮痛剤などでは全く効果のない厄介な頭痛だ。
しかし、1時間耐えれば楽になるということが体験的にわかっているので我慢出来る。
この群発頭痛で学んだことは、痛みのない時間がありがたいと思えるようになったことだ。
1時間耐えた後、痛みが消えてゆく瞬間を迎える時の開放感は言葉にできない。
人間にとって肉体的な痛みは辛いものだが、痛みが与えてくれるプレゼントも確かにある。
ゼロを喜べる能力だ。
金を儲ける喜びよりも借金を返せた時の喜びの方が大きいと思う。
快楽や快感よりも痛みや苦痛からの解放の喜びの方がはるかに大きい。
質が違う喜びだ。
痛みがなければこの喜びを味わうことはなかった。
私はゼロを喜ぶ能力を与えられたことを心からありがたいと思っている。
3/6/2025, 2:56:35 PM