Ryu

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猛獣が吠える。
この契約が取れなかった穴埋めはどうする気だ?と。
知らん。誠心誠意の交渉を断った相手に聞いてくれ。
声にならない思い。
声に出しちゃならない思い。
ガオーガオーと吠える獣は、吠えるだけの権力を手に入れている。

エレベーターホールで、同僚から飲みに誘われる。
溜まった憂さを晴らすべく、景気よくパァーっと行かないかと、昭和のような誘い方で。
どうせまた、お前の業績自慢をされるんだろ。
そしてその後は、こーゆーとこ直すべきだの説教三昧。
美味い酒なんて飲めるわけがない。

俺は帰るよ。
俺にとってのオアシスが待っているから。
お前と飲む酒じゃ、猛獣に襲われた俺の心は癒せないんだ。
他愛のない、いつもの光景。ただ、そこにあるもの。
我が家という名のオアシス。
猛獣の雄叫びも、自信家の説教も忘れて、新しいアニメの配信で盛り上がる。

オアシス、なんて平和的な名前を付けて、喧嘩ばっかりしてる兄弟バンドもいたっけな。
彼らの歌は、ファンの心にオアシスをもたらしてくれたけど、そんなにいがみ合っちゃ名曲まで薄汚れてしまう。
言い争っても、心のどこかでつながっていて欲しい。
世界にたった一人の、兄弟、家族なんだから。
それは、誰にとってもオアシスであって欲しい。

7/28/2025, 2:52:55 AM