入道雲
真っ白な画用紙に、爽やかな青を乗せる。
真ん中だけ、大きな綿菓子のような形を空けておく。ここは、入道雲にするのだ。
青で空を作り終わったら、パレットでその青を薄め、雲の影を染める。
視線を画用紙、パレット、空の3か所で回転させながら、一心不乱に筆を進めると、本物そっくりの空が画用紙に写し取られた。
でも…。
「なにか、違う…」
どうしても、この目の前に広がる、本物の空の方がいいなと思ってしまう。私は絵の中で、この空を美しくできていない。
なにがいけない?なにが変?なにがおかしい?
青に他の色を混ぜた方がよかった?入道雲はもっと大きい方がよかった?本物そっくりに描かずに、オリジナルの表現を加えた方がよかった?
分からない。どこをどうすればいいのか、なにも分からない。
それでも。いつか美術館で見た、あの空の絵のように。
私が描いた絵の方が素敵だって、誰かに思わせてやるんだから。
それまで絶対、描き続けてやる。
6/29/2023, 1:11:25 PM