大切な存在というのは、案外失ってから気づくものだ。
お気に入りの消しゴムがなくなった。
毎日使っていたコップが割れた。
靴を履こうとしたら、靴紐が千切れた。
ある日突然、貴方がこの世を去った。
本当に、突然のことだった。
酒に酔った運転手が、人を一人跳ねた。ただそれだけ。ありふれた日常の中でも、どこにでもあるような悲劇だった。
まだ、一緒にやりたいことが沢山あった。
何がやりたかったの?と聞かれれば、すぐには答えられないけど、段々と話していくうちに見えてくる未来が輝かしかった。
スイカ割り、バーベキュー、イルミネーション、山登り、カフェ巡り。
貴方は、やりたいことの一つも叶えることはなく、私を置いてどこかへ行ってしまった。
失ってからじゃ遅い。
後悔してからじゃ遅い。
貴方という存在がいなくなって、私の心にはすっかり大きな穴が空いてしまった。
他のどんなもので埋めようとしても、崩れてしまう。
時間が解決してくれるだろうか。
この大きな穴が埋まる日は来るのだろうか。
いや、多分きっと来ない。
来なくていい。
貴方との記憶を、他の適当なもので埋めるくらいだったら、一生この喪失感を抱えたまま、死んでしまいたい。
『喪失感』
9/10/2024, 1:12:41 PM