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【怖がり】

昔、夜のトイレって怖くなかった?

昼間は普通に行けるのに、夜になるとなぜか怖く思えるの。
それなのに夜中に目が覚めてトイレに行きたくなるから困る。
だからお母さんについてきてって言うんだけど、お母さんも眠いから一人で行ってきてって。
しばらくついてきて、嫌だ、っていうのが続くうち、トイレも我慢できなくなってくるから、仕方なく一人で行くことになるんだよね。

でも、夜のトイレは怖い。トイレの電気をつけても、どこかに何かが潜んでいるような気がしてくる。
本当に夜だけ、そんなことを考えちゃう。
用を足してるあいだにも、この無防備な時に何か得体の知れないものが襲ってくるんじゃないかって気が気じゃなかった。
そう、僕ってだいぶ怖がりな子供だったんだよ。

え、今の僕?
今はもう二十代半ばの立派な大人なんだけどね。
ホラー映画やスプラッタ映画を観るのが趣味な大人になっちゃった。
お化け屋敷に入っても、そこにいるお化けを冷めた目で見てるような大人に。

なんでって……だって、十代後半くらいから、トイレに居る「得体の知れないもの」に何度も出くわすようになったから。
前は存在を感じるだけだったのに、成長と共に実際に「見える」ようになっちゃって。
だから、作り物を見ても怖くなんかないのさ。
本物こそ、ふとしたきっかけで豹変することを知っているし、姿形も言動も本当に恐ろしいからね。
怖がりな少年は、時を経てこんな風に育ちましたよ。

3/16/2024, 10:30:22 PM