三羽ゆうが

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鐘の音が鳴り響く。窓から飛び去ろうとする彼に声をかけた。

「いつか貴方の元で学びたいです!」

「…………10年後の満月の日。ここで待ってろ」

華麗なるワザによって、服に飛び散り咲いた赤い薔薇。目の前で親がいなくなった事よりも、魅了されてしまった心は止められない。


その日から人生の世界が変わった。何事も平均だった自分が嘘のようだ。努力し、挑戦し、失敗し、成長する。あの日見た彼の姿だけを目標にして。

鐘の音がなる度に思い出す。あの姿を、あの感動を、あの高揚を。




この仕事も慣れてきた。今日も完璧に任務をこなし窓から立ち去ろうとすると、子供に呼び止められた。

「あの!」

「…………」

「いつか貴方の元に置いてください!」

その姿は昔の自分と重なっていた。感動と好奇心が混ざりあって二度とない胸の高鳴りを感じたあの瞬間。無意識に自分の口角が緩くなる。

「……10年後、鐘の鳴る夜、またここで会おう」

「……!はい!!」

鐘の音が鳴り響く。ふわりと少年に微笑むと、窓から飛び去った。


『鐘の音』

8/5/2024, 1:17:21 PM