わをん

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『失われた時間』

学校からの宿題やお母さんに頼まれた草むしりなど、やるべきことはいろいろとあるのだけれど今日は日曜日。ついついゲーム機に手が伸びてついつい続きを再開してしまう。ゲームを楽しむ一方でやるべきことが頭の隅でそろそろやったほうがいいよと囁いていたけれど、コントローラーから手が離れない。あの祠をクリアしたらやろう。そう思っていたのに祠を出れば洞窟に行き当たる。洞窟を出たらやろう。そう思っていたのにどんぐりみたいな小人が助けを求めてくる。
窓の外からオレンジがかった光が差している。最近は日も長くなって夕方でもまだ明るい。そろそろ晩ごはんの時間だろうか。空腹を感じ、ゲームを切り上げてリビングに降りるとお母さんが晩ごはんの支度をしながら冷ややかな声で尋ねてきた。
「草むしりやった?」
「……マダデス」
「まだ明るいからできるよね?」
「ヤリマス」
外は春の陽気が薄れて少し肌寒く、少し薄暗い。家の周りによく伸びた雑草をぶちぶちと音を立ててむしると草の青臭さが立ちのぼり、それに混じる晩ごはんのいい匂いにおなかが余計に空腹を訴えてくる。
「宿題もやらなくっちゃ……」
失われた時間を思いつつ、腰を伸ばしてため息をひとつ吐いた。

5/14/2024, 3:49:36 AM