マシュマロの美脚

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「形の無いもの」



ぽちゃん...  ぽちゃん... 

薄暗い路地、その先にはスラムが広がっている。
だだっ広いスラムの入口

雨漏りする家とは言えない寄せ集めで作った箱
スラムの入口に建てられた箱
そこに住む小さな子ども。

皆こんなもんだ。
この国の名前は知らない。
でもこの国が腐っている事ぐらいは知っている。
この周辺諸国に住んでいるものはみな知っている。

贅肉で肥えた貴族たち。
暴虐の限りを尽くす王族。
どうすることもできず飢えに苦しむ国民。

資源も少なく荒れた国などすぐに落とせるが他の国は皆見て見ぬふり
資源もなく金だけがかかる国などいらない。


そんな国の被害者。一人の子ども。
誰にも救われず一人死んでくだけで誰も見向きもしない。
当たり前の日常。

そんな国が実在してしまった。


可哀想な国民たち。
そう同情しても仕方がない。
それなら飯をと、皆話す。

それでも数はいる。
人材をいくら取ろうと怒られない。
様々な国が密かに入り混じり、監視する

そんな国に立ち寄ったお師匠様に僕は拾われた。
数少ない精霊に好かれる体質だった僕はお師匠様に生贄へと選ばれた。
後8年後、僕がハタチになれば精霊の生贄になれるらしい

僕はお師匠様に拾われて幸運だった。
絶対にハタチまで美味しいものを食べて知識を得られるから。皆すぐ死んでくスラムよりよっぽどいい。

お師匠様は、エルフという種族らしい。
何でも長寿らしいが実際は少し違うらしい。
精霊に好かれ対価を渡せば大体のものは得られる。
世界に十人といないらしい。

僕は運好く精霊に好かれる人間だった。
生贄の儀式を行う場所へ行く為に今は旅をしている。
知識、体、精神力、信仰、技工、どれも多ければ多いほど良いらしい。
僕はお師匠様に様々な事を教わった。

地面に生えている薬草から、それの効能。
剣術に弓術。
どんな時でも冷静に慣れるようにと狩りもした。
この世界の神々についても教わった。
鍛冶や建築、裁縫まで…
何でもお師匠様は出来たし知っていた。

たのしかった。
知識を得ることはこんなに楽しいのか…
体を動かすのはこんなに楽しいのか…
しらなかった。
初めて得た事は僕には衝撃で、、、

そんな僕も十五になった。
二十歳まであと5年。
お師匠様と出会って3年がたった。
お師匠様は何も教えてくれない。

お師匠様の好きな食べ物
お師匠様の好きな国
お師匠様の好きだった人

何もお師匠様の事は教えてくれない
僕はメイアと言う名前をもらった。
お師匠様の名前は知らない。
どうせあと五年の付き合いだ


旅は順調だ。
儀式の場所…世界樹の泉まではあと三年もあればたどり着くらしい。
早く着いたら近くの町で滞在するらしい。

………………

最近一つ気づいたことがある。
お師匠様は見えている世界が違う。
悪い物や人が一目見るだけですぐに気づく。
どうやら悪意や殺意が形になって見えるらしい。
逆に好意などもそう見えるらしい。
僕の形も見てもらった事もあるがどうやら形が無いらしい。
何でだろ、お師匠様は何か気づいてるらしい。


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ザッザッ、、ザッザッ、、ザッザッ、、

歩くひたすら歩く
あれから五年の、儀式まで三年、
十七になった。
体は大きくなったし、お師匠様のおかげで知識も得た。

ここまで育ててくれたお師匠様はが好きだ。
これが親愛か恋愛的な愛か、分からない。
それでも側を離れたくない。

お師匠様は僕を贄にする為に拾って愛着がわかないようにそっけなかった。
それでもお師匠様が好きな僕はいつも話しかけた
お師匠様は次第に話してくれるようになった。
僕も大きくなった。
お師匠様は僕から離れようとした。
僕を贄に出来ないんだと。
優しいね。僕はスラムで暮らしていた影響か、心に感情という形が無いらしい。

お師匠様は僕のように変化し続ける心は初めて見るらしい
理由は分からなかった。
でも多分、したい事も何も無い。
三大欲求?笑わせるね。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


二十歳
贄になる。
お師匠様はずっと反対している。
愛着湧いちゃったてさ。
でも僕がしたいんだ。
お師匠様に感謝しているからお師匠様にお礼をしたい。
僕にできることはこのぐらい。

お師匠様は拗ねて今日は一緒じゃない。
世界樹の泉へ登っている。
エルフが長寿なのは、どうやら精霊に好かれる体質でお願いが聞いてもらえるらしい
その対価で精霊が食せる体質の人間を捧げているらしい。
それが僕だった。

泉につくとお師匠様はすでにいた。
「本当にメイアはいいのか?死ぬんだぞ!痛いぞ!」

お師匠様は泣きそうな声でそう発する。
お師匠様を無視して僕は泉に入る。
ぷかぷかと浮く体。
泣き崩れるお師匠様。

周りに羽虫が集まり僕の体へ…


ブチッッッ        ブチッッッ    
    ブチッッッ  ブチッッッ     ブチッッッ


体がちぎれていく音がする。
痛い。これまで味わったことの無い痛み。
お師匠様を泣かせれる存在になれた。
お師匠様を助けれる。
そう思うと嬉しかった。
生涯に悔い無し。
ふふふ


メイアの形のない心は初めて嬉しい形になった





お師匠様が泣いたのは罪悪感からか、恐怖からか、愛着からか、何なんでしょうね

9/24/2024, 2:02:41 PM