蛇の舌

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題『こんな夢を見た』

「おはよう。今朝は随分ゆっくりだね」
「…………夢を見た」
寝室からのそりと出てきた彼は、白い髪をあちこちに跳ねさせたまま、地を這うような低い声で呟いた。
「夢?」
オウム返しに聞けば、眉間に皺が寄った。カップでその顔を遮り、中身をひと啜り。
「……俺があんたを抱く夢だ」
「うん? ……ゲホッ」
予想外の答えに咽せた。
「なるほど、なるほど……」
こちらの困惑をよそに、彼は言うだけ言って(問うたのはこちらではあるのだが)シャワーを浴びに浴室へ篭ってしまった。
揶揄われたような、試されたような気分だ。
なるほど、それならば……。

「つまりキミはーー」
頭を拭きながら出てきた彼にすかさず切り出す。
「?」
「とても気持ちの良い夢を見たから寝坊したのだということかな?」
私が言い終わるか終わらなかいかの内に、湿ったタオルをぶつけられた。

1/24/2024, 3:44:52 AM