夢の中で必ず会うひとがいた。
最初は赤ちゃん。次は歩き出したころ。
ブロンドヘアに碧眼の少年は、すくすくと背が伸び、わたしの成長に合わせて大きくなってゆく。
あなたは誰?
いつだったかそう問いかけて手を伸ばしてみたけれど、夢の中は儚い泡沫。彼はわたしに答えること無く、姿が霞んで。
そうして空に向けて手を伸ばしたまま朝を迎えた。
彼のことを夢に見なくなった頃、この国の王子が、運命の女性をさがしているという噂が耳に入った。
そのすがたかたちが、わたしとぴったり一致することは、周りの誰もが気づいていた。
あなたが彼?
わたしの家に向かって近づいてくる馬車を、胸を高鳴らせながら待ち受ける。
果たして、馬車から降りてきた王子は、ブロンドヘアを揺らし、碧眼を細めて。
「会いたかったよ、きみ」
真っ赤な薔薇の花束を、わたしに向けて差し出した。
お題:あなたは誰/たつみ暁
2/19/2025, 12:20:16 PM