【135,お題:仲間】
仲間って言うのは、他人以上友人未満みたいな関係を指すもので
俺とアンタの関係も、どんなものかと聞かれたら「仲間だ」と言うに等しいと
そう思っていたんだ
アンタはいっつも呑気でだらしなくて楽観的な奴だったな、原稿の提出期限だってちゃんと守る方が少なかった
俺が原稿書いてるときだって、横から後ろから「ゲームしよう」だとか「ねぇ暇なんだけどー」とか...
うるさい、と怒鳴って席を立つと、きゃあきゃあ言いながら走って逃げて
まるで同い年じゃなくて、5歳児か、話の通じないペットと生活しているような気分だったよ
うるさいし、邪魔ばっかりするし、いたずらやドッキリ...
金遣いは荒いし、酒癖も悪い。後先考えずに突っ走るし、それに俺を巻き込むし
だから急に居なくなった時も、いつもの浮浪癖だと思ったんだ
コーン...コーン...コーン...
「この度はご愁傷様でございます。謹んでお悔やみ申し上げます。」
そう挨拶した時、アイツの母親は泣きながらも
「あの子と仲良くしてくれてありがとう」と繰り返し言っていた
「...俺を呼んで良かったんですか?特に接点もない、他人ですよ?」
「いいのよ...あの子と一番仲が良かったのは、貴方だもの」
「そう...ですか、」
大量の花と共に棺に収まったアイツの姿を見た、その姿はとても"らしくなくて"
もしかしたら全てドッキリで、いまにも起き上がって「騙されたーw」と愉快に笑うのではないか
そう思ったが、手に少し触れたとき、もうすでに人の温度ではなくて漠然とした虚無感があった
「なんで、コイツ死んだんすかね」
誰に聞かせるつもりもなく、小さく呟く
「アンタ、なんで死んだ?」
別に死んだのが悲しいとか寂しいとか、死んでほしくなかったという執着があったわけじゃない
死ぬときは死ぬんだし、訃報を聞いた時も「そうなのか」くらいにしか思わなかった、だが
「変な感じだ」
少なくとも、俺よりは生きるだろうと思っていた。こんなに早く死ぬとは思わなかった
アイツの母親は、「あの子と一番仲が良かったのは貴方だ」と言っていた
そうだっただろうか、本当に俺とアイツは仲が良かったのか
でもまあ、そうか
「仲間」なら、はいそうですか。で終わるもんな
こうして葬儀にも来て、俺はちゃんと悲しくなっている
「死ぬ時くらい連絡しろよ」
ようやく俺達は、対等な友人になれたのかもしれない
12/10/2023, 2:39:28 PM