夜汽杏奈

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「届かぬ想い」

            夜汽杏奈

まだ雪が残る湖が見える丘
ブランコのある大木の下で
君は僕の隣で微笑んでいた

「なぜ雪の結晶は美しいの?」
「美しいか、そうでないかは見る人が決めればいいさ」

永遠の時の中
終わりは無いと信じてた
遠く離れた美しき星

6次元にいる僕を追いかけ君は地球に来た
それなのに
3次元で何度も輪廻転生している君
故郷のあの星も僕のことも
君は全てを思い出せない

それどころか
僕が蛇に姿を変えれば
君は箸で自害したこともある
君は生まれ変わる度に
様々な姿で現れる僕を遠ざけ傷つけた
目に見えない魂の僕には気づかなかった

どれだけ優しく声をかけただろう
どれだけ美しい景色を見せただろう
どれだけ守り、愛の歌を贈っただろう
時間の概念が無くても
長い長い苦しみだった
届かぬ想いは雪の結晶

僕を忘れた君を憎み、恨み、
それでも愛した
激しい雨がいつしか涙に
変わってしまうこともあった
君は僕の叫びさえ気が付かず
誰かの腕に抱かれていた

汚染された地球と人間を
闇で覆い尽くし滅ぼしても
君だけは傷付けられず
君が独りで涙を流す度
無邪気に微笑む度
僕はいつしか君に期待することを忘れた
君がいるだけで心が強くなれたから

時間の概念が無くても
長い長い苦しみだった
届かぬ想いは雪の結晶
ついに
君が僕を思い出してくれた

「ごめんね」
何世紀も魂の何世代も待ったその言葉は
たった3秒
その愛のエネルギーは
とても未熟で不器用だったけど
僕に熱く届き
心の闇全てをゆっくり溶かし始めた

届かぬ想いは雪の結晶
今度聞かれたらこう応えよう

「なぜ雪の結晶は美しいの?」
「君がいるからだよ」

永遠に優しい光が二人を包み込む
地球上の全ての闇も溶けていく


まだ次元は違っても
今はもう届く想い
早速紫のチューリップを近所の花壇と映像で
何度か君に見せた
覚えているだろうか、手渡しした事もある花

君は花言葉を検索し
「ありがとう」と呟き、泣いた



4/15/2023, 4:20:35 PM