フグ田ナマガツオ

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引き止めるには、少し遅かった。
もう決めたんだとハッキリと君は言った。
その表情は寂しさを微かに含んでいるように見えたが、ただ私がそう思っていたいだけかもしれないと思った。
駅のホームには私たちしかいない。
3月の風はまだ冷気を含んだまま、あっさり遠くへ去っていく。
こうして帰るのも、あと数回だけ。
利用者のほとんどいないこの駅は、私たちの通学のためだけに残されているらしい。
私は島に残るけど、これから実家の酒屋を継ぐから、もうこの電車は使わない。
利用者がゼロになった駅はなくなって、学校も廃校になって、君は私の前からいなくなって。
私は君と過ごした12年間の思い出をしがんで生きる。
行ってらっしゃいと私は言った。
行かないでと思いながら。

10/24/2023, 11:45:39 AM